はじめに:副業で赤字になっても「損」ではない理由
副業を始めたばかりの頃は、
「パソコン代やソフト代が先にかかって赤字になった」
「思ったより経費が多くて利益が出なかった」
というケースが珍しくありません。
「赤字になったら税金どうなるの?」
「申告した方がいいの?放っておいてもいい?」
「翌年に繰り越せるって聞いたけど本当?」
結論から言えば──
副業の赤字は、条件を満たせば翌年以降の税金を減らす“資産”に変わります。
特に青色申告をしている場合は「損失の繰越控除」によって、3年間の節税効果を得られるのです。
この記事では、副業で赤字になった場合の扱い・申告の仕方・損益通算のルールを、初心者にもわかるように徹底的に解説します。
目次
- 副業で赤字になるのは普通のこと
- 副業で赤字になったときにやるべきこと
- 「損益通算」とは?他の所得と相殺できる仕組み
- 「損失の繰越控除」とは?3年間の節税効果を解説
- 雑所得の副業と事業所得の副業で違う扱い
- 繰越控除を使える条件と必要書類
- 実際の確定申告手順(青色申告の場合)
- 副業で赤字申告をするメリット・デメリット
- 注意:経費の入れすぎはリスクにもなる
- まとめ:赤字を上手に活かして副業の成長につなげよう
1. 副業で赤字になるのは普通のこと
副業を始めてすぐに利益を出せる人は多くありません。
初年度はむしろ「投資期間」と割り切る人の方が多いです。
よくある赤字の原因例
- パソコン・周辺機器の購入(10万円〜)
- 有料ソフト・オンライン講座への投資
- サイト・チャンネル立ち上げ費用
- 広告・撮影・仕入れ・交通費など
これらの支出はすべて「事業を始めるための必要経費」。
一時的な赤字でも、正しく申告しておくことで翌年以降の税金を軽減できます。
2. 副業で赤字になったときにやるべきこと
✅ ステップ1:赤字を正確に計算する
所得 = 収入 − 経費
収入より経費が多ければ、その差額が「赤字(損失)」です。
✅ ステップ2:帳簿・領収書を整える
赤字でも確定申告をするには、収支の記録と証拠書類が必要です。
- freeeやマネーフォワードで自動帳簿化
- 領収書・レシートをスキャンして保存
✅ ステップ3:確定申告書を提出
赤字を出した年も、必ず申告をしておくことで
翌年以降に「繰越控除」を受けられます。
3. 「損益通算」とは?他の所得と相殺できる仕組み
まず知っておきたいのが「損益通算(そんえきつうさん)」という制度です。
「ある所得の赤字を、他の所得の黒字と相殺できる制度」
例:
- 本業(給与所得):年収400万円
- 副業(事業所得):▲20万円(赤字)
→ 総所得=380万円として税金計算できる
つまり、副業の赤字があると所得税・住民税が減る可能性があります。
ただし、損益通算ができるのは「事業所得」「不動産所得」「山林所得」「譲渡所得」など限定。
副業が「雑所得」扱いの場合は通算できません。
4. 「損失の繰越控除」とは?3年間の節税効果を解説
「損失の繰越控除」とは、
赤字を翌年以降の黒字と相殺できる制度(最大3年間)
たとえば:
| 年度 | 事業所得 | 控除対象 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 2024年 | ▲50万円 | ― | 損失50万円発生 |
| 2025年 | +40万円 | 繰越50万円と相殺 | 課税所得0円(10万円繰越) |
| 2026年 | +30万円 | 残り10万円と相殺 | 完全消化 |
このように、翌年以降の黒字が非課税になるのが最大のメリットです。
青色申告をしていれば自動的に適用できます。
5. 雑所得の副業と事業所得の副業で違う扱い
| 区分 | 赤字の扱い | 損益通算 | 繰越控除 |
|---|---|---|---|
| 雑所得(お小遣い副業) | 申告できるが控除不可 | × | × |
| 事業所得(開業届提出済) | 申告可 | ○ | ○(青色申告限定) |
つまり:
赤字を有効に活かすには、副業を「事業所得」にすることが必須条件です。
そのためには「開業届」を提出して、青色申告を選ぶ必要があります(詳細はNo.7記事参照)。
6. 繰越控除を使える条件と必要書類
✅ 条件
- 青色申告をしていること
- 確定申告を毎年連続して行っていること
- 赤字が「事業所得」など損益通算対象の所得であること
✅ 必要書類
- 青色申告決算書
- 確定申告書B
- 前年度の申告書控え(繰越額記載あり)
- 帳簿・経費の記録
✅ 注意
1年でも確定申告を怠ると「繰越権」が消滅します。
赤字を出した年も必ず申告しましょう。
7. 実際の確定申告手順(青色申告の場合)
- 会計ソフトで年間の収支を入力
- 「損益計算書」を自動作成
- 赤字が出た場合、「損失金額」を確定申告書Bの該当欄に記入
- 翌年の申告時、「繰越損失額」として反映
- 自動的に翌年以降へ引き継がれます
freee・マネフォではこの流れが自動化されており、入力ミスの心配なしです。
8. 副業で赤字申告をするメリット・デメリット
メリット
| 内容 | 解説 |
|---|---|
| 税金が減る | 損益通算・繰越控除で所得税・住民税を軽減 |
| 節税になる | 翌年以降の利益と相殺可能 |
| 経費をしっかり使える | 投資的支出を翌年に活かせる |
| 開業届を出すことで信用UP | 個人事業主としての実績になる |
デメリット
| 内容 | 解説 |
|---|---|
| 帳簿管理が必要 | 青色申告は記帳義務あり |
| 一時的にキャッシュが減る | 経費先行型の投資は現金負担あり |
| 経費の過剰計上リスク | 不自然な赤字は税務署チェック対象 |
9. 注意:経費の入れすぎはリスクにもなる
節税目的で過剰に経費を入れすぎると、
「事業実態がない」「趣味レベル」と判断されることがあります。
税務署が注視するポイント:
- 副業の継続性(収入が毎年あるか)
- 経費の妥当性(家賃・車・旅行など)
- 生活費との区別(按分処理しているか)
経費を入れるときは必ず「事業との関係性」を説明できる状態にしておきましょう。
10. まとめ:赤字は“失敗”ではなく“次の年の武器”
- 副業で赤字になっても損ではない
- 青色申告をしていれば「損益通算」「損失繰越控除」で税金を減らせる
- 雑所得扱いだと控除できない
- 開業届を出して「事業所得」扱いにすることが重要
- 経費は正しく、証拠を残す
副業は初年度赤字でも、次の年から大きく伸びることが多いです。
そのためにも、赤字を正しく申告して“未来の節税資産”に変えることが、賢い副業者の戦略です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 赤字でも確定申告をしないとダメ?
→ はい。しないと繰越控除が使えません。翌年以降の節税チャンスを失います。
Q2. 白色申告でも繰越できますか?
→ できません。青色申告限定です。
Q3. どんな経費が多いと赤字になりやすい?
→ 機材費・通信費・講座費などの初期投資が多い副業(ブログ、動画編集など)。
Q4. 赤字が続くと税務署に怪しまれますか?
→ 3年以上連続赤字だと「事業性の有無」を確認される可能性があります。

