はじめに:YouTube・Upwork・Etsyなど「海外収入」も日本で課税対象
「YouTubeの収益ってアメリカの会社から支払われるけど、税金は日本で払うの?」
「Upworkや海外企業から直接送金されたお金って申告しなきゃダメ?」
──答えは、日本の居住者であればすべて課税対象です。
日本では「全世界所得課税制度」が採用されており、
日本に住所がある人は、海外からの収入も含めて日本で課税される。
つまり、ドル建て・ユーロ建て・海外振込でもすべて日本円換算して申告する必要があります。
目次
- 日本の「全世界所得課税制度」とは
- 海外プラットフォーム収入の具体例(YouTube・Upwork・Etsy・海外企業案件)
- 海外報酬にかかる税金の種類
- 外貨収入を円換算する方法(為替レートの扱い)
- 源泉徴収(米国税)と日米租税条約の関係
- 具体的な申告方法(確定申告書の作成例)
- 経費にできるもの・為替手数料の扱い
- 海外プラットフォーム別の注意点まとめ
- 税務署・銀行でのチェックポイント
- まとめ:海外収入は「日本円換算+記録保存」で対応できる
1. 日本の「全世界所得課税制度」とは
日本では、所得税法上の「居住者」(=日本に1年以上住んでいる人)は、
世界中の所得が日本で課税対象になります。
| 区分 | 居住要件 | 課税対象 |
|---|---|---|
| 居住者(一般の日本在住者) | 日本に住所または1年以上の居所 | 世界中の所得すべて |
| 非居住者 | 一時滞在・海外移住者 | 日本国内源泉所得のみ |
つまり、
海外からドルで支払われても、報酬は「日本の所得」として申告する必要があります。
2. 海外プラットフォーム収入の具体例
| サービス | 所得区分 | 支払元 | 備考 |
|---|---|---|---|
| YouTube(AdSense) | 事業所得 or 雑所得 | Google(米国) | 米国源泉徴収あり/日米租税条約で減免可 |
| Upwork | 事業所得 | Upwork Global Inc. | 海外送金/ドル建て報酬 |
| Fiverr・Freelancer | 事業所得 | 海外企業 | Payoneerなど経由で入金 |
| Etsy(海外向け販売) | 事業所得 | 海外顧客 | 売上レポートを為替換算で記録 |
| 海外企業との直接契約 | 事業所得 | 海外法人 | 契約書ベースで請求書発行可 |
ポイント:
日本のASP(A8.netなど)と同じ扱いで、「報酬を得た日」で収入計上します。
外貨送金のため、為替レート換算が重要です。
3. 海外報酬にかかる税金の種類
日本で課税されるのは主に以下の3つです。
| 税種 | 対象 | 備考 |
|---|---|---|
| 所得税 | 副業・個人事業の所得 | 20万円超で確定申告 |
| 住民税 | 金額問わず課税 | 自治体へ申告 |
| 消費税 | 売上1000万円超で課税 | 海外報酬も「国内取引」扱いのケースあり |
所得の種類
- 継続的に行っている → 事業所得
- 一時的・少額 → 雑所得
4. 外貨収入を円換算する方法(為替レートの扱い)
外貨で受け取った収入は、日本円に換算して記帳します。
換算レートの原則
- 収入発生日のTTM(公示仲値)レートを使用
- 日本銀行・三菱UFJ銀行などの為替レートを参考にする
- 毎回のレート記録をExcelや会計ソフトに保存しておく
記入例(ドル収入)
2025年1月10日 Upwork報酬 $500
レート:1USD = 150円
→ 売上金額:75,000円
注意:
実際の入金時に為替差損益が出る場合があります。
為替差益・差損も事業所得の一部として計上可能。
5. 源泉徴収(米国税)と日米租税条約の関係
YouTube(AdSense)や海外プラットフォームでは「米国源泉税」が差し引かれるケースあり。
- 通常:**報酬の24%**が米国源泉徴収
- W-8BENフォームを提出すると日米租税条約により0%(日本居住者の場合)
対応方法
- Google AdSenseやUpworkで「税務情報(W-8BEN)」を提出
- 「日本居住者」かつ「個人」区分を選択
- 納税番号(マイナンバー)を入力
これで米国側での二重課税が防げます。
差し引かれた場合は、日本で「外国税額控除」を申請すれば税額を相殺できます。
6. 具体的な申告方法(確定申告書の作成例)
① 所得区分を選択
- 継続的に報酬を得ている → 「事業所得」欄
- 一時的に得た場合 → 「雑所得」欄
② 収入の記載
事業所得:YouTube報酬 300,000円(為替換算済)
経費:通信費・サーバー費・動画機材費 120,000円
所得:180,000円
③ 為替差損益
- 差益:課税対象
- 差損:経費として控除可能
④ 外国税額控除の申請(源泉徴収があった場合)
確定申告書B+「外国税額控除に関する明細書」を添付。
7. 経費にできるもの・為替手数料の扱い
| 経費区分 | 具体例 |
|---|---|
| 通信費 | ネット・回線・スマホの業務利用分 |
| ソフト費 | 動画編集ソフト・画像ツールなど |
| サーバー・ドメイン | WordPress・クラウドサービス |
| 手数料 | PayPal/Payoneer送金手数料・為替手数料 |
| 渡航費 | 海外クライアント訪問時の旅費(業務目的限定) |
※ 為替手数料は「支払手数料」として経費化可能です。
8. 海外プラットフォーム別の注意点まとめ
| サービス | 注意点 |
|---|---|
| YouTube(Google AdSense) | W-8BEN提出必須。源泉徴収0%設定を忘れずに。 |
| Upwork | 報酬+手数料10%を合わせて記帳。TTM換算。 |
| Etsy | 海外販売では送料・関税も売上・経費に含む。 |
| Fiverr | 通貨変換手数料を経費化。支払通知メールを保存。 |
| 海外企業からの直契約 | 契約書・請求書を英日併記で保管。レートを明記。 |
9. 税務署・銀行でのチェックポイント
税務署対応
- 海外送金明細を「収入証明」として提出できるように保存
- 為替換算根拠(レート表)を出せるようにしておく
- Google AdSenseの「支払レポートPDF」やUpworkの「Earnings Report」は印刷保存
銀行口座
- 海外からの入金が続く場合、「事業用口座」に分けておくと管理しやすい
- 銀行によってはマネーロンダリング審査が強化されているため、事業内容説明が必要な場合あり
10. まとめ:海外収入でも日本の税金ルールで処理すれば問題なし
- 海外サービスの報酬も日本で課税対象(全世界所得)
- ドル・ユーロ建てはTTMレートで円換算して記帳
- 米国源泉税はW-8BEN提出で防止/外国税額控除も可能
- 経費・手数料も漏れなく計上
- 住民税は普通徴収を選んで会社通知を防ぐ
副業で海外収入を得ても、ルールを理解して正しく申告すれば問題なし。
むしろ、グローバル案件に対応できる副業者として信頼が高まります。
海外収入は「難しそう」に見えても、
「円換算+帳簿記録+書類保存」で誰でも対応可能です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 為替差益も課税されますか?
→ はい。入金時に円高で得した分は「雑所得」または「事業所得」に含めます。
Q2. 米国税が引かれていました。どうすればいい?
→ 「外国税額控除」を申請すれば日本の税額と相殺できます。
Q3. W-8BENは毎年提出が必要?
→ 更新は3年ごと。期限切れに注意。
Q4. 海外企業から直接支払われた場合の請求書は?
→ 日本語でも可。金額・通貨・為替レート・支払日を明記しておくこと。

