はじめに:副業で赤字になっても「損」ではない理由

副業を始めたばかりの頃は、
「パソコン代やソフト代が先にかかって赤字になった」
「思ったより経費が多くて利益が出なかった」
というケースが珍しくありません。

「赤字になったら税金どうなるの?」
「申告した方がいいの?放っておいてもいい?」
「翌年に繰り越せるって聞いたけど本当?」

結論から言えば──
副業の赤字は、条件を満たせば翌年以降の税金を減らす“資産”に変わります。
特に青色申告をしている場合は「損失の繰越控除」によって、3年間の節税効果を得られるのです。

この記事では、副業で赤字になった場合の扱い・申告の仕方・損益通算のルールを、初心者にもわかるように徹底的に解説します。

目次

  1. 副業で赤字になるのは普通のこと
  2. 副業で赤字になったときにやるべきこと
  3. 「損益通算」とは?他の所得と相殺できる仕組み
  4. 「損失の繰越控除」とは?3年間の節税効果を解説
  5. 雑所得の副業と事業所得の副業で違う扱い
  6. 繰越控除を使える条件と必要書類
  7. 実際の確定申告手順(青色申告の場合)
  8. 副業で赤字申告をするメリット・デメリット
  9. 注意:経費の入れすぎはリスクにもなる
  10. まとめ:赤字を上手に活かして副業の成長につなげよう

1. 副業で赤字になるのは普通のこと

副業を始めてすぐに利益を出せる人は多くありません。
初年度はむしろ「投資期間」と割り切る人の方が多いです。

よくある赤字の原因例

  • パソコン・周辺機器の購入(10万円〜)
  • 有料ソフト・オンライン講座への投資
  • サイト・チャンネル立ち上げ費用
  • 広告・撮影・仕入れ・交通費など

これらの支出はすべて「事業を始めるための必要経費」。
一時的な赤字でも、正しく申告しておくことで翌年以降の税金を軽減できます。

2. 副業で赤字になったときにやるべきこと

ステップ1:赤字を正確に計算する

所得 = 収入 − 経費
収入より経費が多ければ、その差額が「赤字(損失)」です。

ステップ2:帳簿・領収書を整える

赤字でも確定申告をするには、収支の記録と証拠書類が必要です。

  • freeeやマネーフォワードで自動帳簿化
  • 領収書・レシートをスキャンして保存

ステップ3:確定申告書を提出

赤字を出した年も、必ず申告をしておくことで
翌年以降に「繰越控除」を受けられます。

3. 「損益通算」とは?他の所得と相殺できる仕組み

まず知っておきたいのが「損益通算(そんえきつうさん)」という制度です。

「ある所得の赤字を、他の所得の黒字と相殺できる制度」

例:

  • 本業(給与所得):年収400万円
  • 副業(事業所得):▲20万円(赤字)
    → 総所得=380万円として税金計算できる

つまり、副業の赤字があると所得税・住民税が減る可能性があります。

ただし、損益通算ができるのは「事業所得」「不動産所得」「山林所得」「譲渡所得」など限定。
副業が「雑所得」扱いの場合は通算できません。

4. 「損失の繰越控除」とは?3年間の節税効果を解説

「損失の繰越控除」とは、

赤字を翌年以降の黒字と相殺できる制度(最大3年間)

たとえば:

年度事業所得控除対象結果
2024年▲50万円損失50万円発生
2025年+40万円繰越50万円と相殺課税所得0円(10万円繰越)
2026年+30万円残り10万円と相殺完全消化

このように、翌年以降の黒字が非課税になるのが最大のメリットです。
青色申告をしていれば自動的に適用できます。

5. 雑所得の副業と事業所得の副業で違う扱い

区分赤字の扱い損益通算繰越控除
雑所得(お小遣い副業)申告できるが控除不可××
事業所得(開業届提出済)申告可○(青色申告限定)

つまり:

赤字を有効に活かすには、副業を「事業所得」にすることが必須条件です。

そのためには「開業届」を提出して、青色申告を選ぶ必要があります(詳細はNo.7記事参照)。

6. 繰越控除を使える条件と必要書類

条件

  1. 青色申告をしていること
  2. 確定申告を毎年連続して行っていること
  3. 赤字が「事業所得」など損益通算対象の所得であること

必要書類

  • 青色申告決算書
  • 確定申告書B
  • 前年度の申告書控え(繰越額記載あり)
  • 帳簿・経費の記録

注意

1年でも確定申告を怠ると「繰越権」が消滅します。
赤字を出した年も必ず申告しましょう。

7. 実際の確定申告手順(青色申告の場合)

  1. 会計ソフトで年間の収支を入力
  2. 「損益計算書」を自動作成
  3. 赤字が出た場合、「損失金額」を確定申告書Bの該当欄に記入
  4. 翌年の申告時、「繰越損失額」として反映
  5. 自動的に翌年以降へ引き継がれます

freee・マネフォではこの流れが自動化されており、入力ミスの心配なしです。

8. 副業で赤字申告をするメリット・デメリット

メリット

内容解説
税金が減る損益通算・繰越控除で所得税・住民税を軽減
節税になる翌年以降の利益と相殺可能
経費をしっかり使える投資的支出を翌年に活かせる
開業届を出すことで信用UP個人事業主としての実績になる

デメリット

内容解説
帳簿管理が必要青色申告は記帳義務あり
一時的にキャッシュが減る経費先行型の投資は現金負担あり
経費の過剰計上リスク不自然な赤字は税務署チェック対象

9. 注意:経費の入れすぎはリスクにもなる

節税目的で過剰に経費を入れすぎると、
「事業実態がない」「趣味レベル」と判断されることがあります。

税務署が注視するポイント:

  • 副業の継続性(収入が毎年あるか)
  • 経費の妥当性(家賃・車・旅行など)
  • 生活費との区別(按分処理しているか)

経費を入れるときは必ず「事業との関係性」を説明できる状態にしておきましょう。

10. まとめ:赤字は“失敗”ではなく“次の年の武器”

  • 副業で赤字になっても損ではない
  • 青色申告をしていれば「損益通算」「損失繰越控除」で税金を減らせる
  • 雑所得扱いだと控除できない
  • 開業届を出して「事業所得」扱いにすることが重要
  • 経費は正しく、証拠を残す

副業は初年度赤字でも、次の年から大きく伸びることが多いです。
そのためにも、赤字を正しく申告して“未来の節税資産”に変えることが、賢い副業者の戦略です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 赤字でも確定申告をしないとダメ?
→ はい。しないと繰越控除が使えません。翌年以降の節税チャンスを失います。

Q2. 白色申告でも繰越できますか?
→ できません。青色申告限定です。

Q3. どんな経費が多いと赤字になりやすい?
→ 機材費・通信費・講座費などの初期投資が多い副業(ブログ、動画編集など)。

Q4. 赤字が続くと税務署に怪しまれますか?
→ 3年以上連続赤字だと「事業性の有無」を確認される可能性があります。

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