はじめに:副業を始めたら「扶養の壁」に注意!

「副業をしたら扶養から外れるって本当?」
「103万円・130万円・150万円の壁って何が違うの?」

──これは副業やパートを始めた人の最初の大きな悩みです。

実は「扶養から外れる」という言葉には、

・税金上の扶養(配偶者控除)
・社会保険上の扶養(健康保険・年金)
という2つのまったく別の意味があります。

この2つを混同すると、思わぬ税金や保険料の負担が発生することも。

この記事では、「税金の扶養」と「社会保険の扶養」の両方を整理しながら、
103万・106万・130万・150万ラインの違いを正確に理解できるように丁寧に解説します。


目次

  1. 「扶養」には2種類ある:税金と社会保険
  2. 【税金上の扶養】配偶者控除・配偶者特別控除の仕組み
  3. 【社会保険上の扶養】健康保険・年金の扶養条件
  4. 103万円・106万円・130万円・150万円の壁とは
  5. 税金と保険、それぞれの影響を表で整理
  6. 副業やパートで扶養を外れるケースとその影響
  7. 収入を抑える?それとも外れる?判断基準とシミュレーション
  8. 会社員・主婦・学生など立場別の注意点
  9. 扶養から外れたときの手続きと戻る条件
  10. まとめ:扶養ラインを理解して損しない副業を

1. 「扶養」には2種類ある:税金と社会保険

まず最初に押さえておきたいのが、扶養には2種類あるということです。

区分管轄対象影響するもの
税金上の扶養税務署配偶者控除・扶養控除所得税・住民税
社会保険上の扶養健康保険組合・年金機構被扶養者認定保険料負担の有無

つまり、

  • 税金上の扶養を外れる → 控除が減って家族の税金が増える
  • 社会保険の扶養を外れる → 自分で保険料を払う必要がある

という、全く別の影響が出ます。


2. 【税金上の扶養】配偶者控除・配偶者特別控除の仕組み

● 配偶者控除

配偶者の年間所得が48万円以下(給与収入103万円以下)の場合、
主たる納税者(夫など)は最大38万円の所得控除
を受けられます。

● 配偶者特別控除

所得が**48万円超~133万円以下(給与収入103万~201万円以下)**なら、
段階的に控除が減額されます(最大38万円 → 最小1万円)。

配偶者の年収控除の種類控除額
103万円以下配偶者控除38万円
103万~150万円未満配偶者特別控除38万円
150万~201万円未満配偶者特別控除減額あり
201万円以上控除なし0円

つまり「103万円を超えてもすぐに損ではない」ですが、
150万円を超えると控除が大きく減るため注意が必要です。


3. 【社会保険上の扶養】健康保険・年金の扶養条件

社会保険の扶養は、収入が一定以下であることが条件です。
このラインを超えると、自分で健康保険料と年金保険料を負担しなければなりません。

● 一般的な目安(協会けんぽ等)

  • 年収130万円未満
  • 月収108,333円未満(交通費込み)
  • 被扶養者として認定される

● 一部大企業・パート先による例外(106万円の壁)

次の条件すべてに当てはまる場合、年収106万円でも社会保険加入が義務になります。

  1. 従業員数101人以上の会社
  2. 勤務時間が週20時間以上
  3. 月収8.8万円以上(年収106万円)
  4. 勤続1年以上見込み
  5. 学生でない

4. 103万円・106万円・130万円・150万円の壁とは

これらの「壁」は、税金・社会保険それぞれの制度上のボーダーラインを示しています。

種類内容影響
103万円の壁税金配偶者控除の対象扶養控除が消える(所得税・住民税UP)
106万円の壁社会保険一部大企業勤務者のパート対象社保に自分で加入(保険料負担増)
130万円の壁社会保険一般的な扶養判定基準保険料を自分で負担する必要が出る
150万円の壁税金配偶者特別控除の満額終了控除が減り、税負担が増える

簡単に言うと:

  • 103万円=税金の第一関門
  • 130万円=社会保険の第一関門
  • 150万円=税金上の最終関門

5. 税金と保険、それぞれの影響を表で整理

項目税金上の扶養社会保険上の扶養
管轄税務署健康保険組合・年金機構
影響範囲所得税・住民税保険料・年金
判定基準年収103万/150万ライン年収106万/130万ライン
外れた場合控除が減り家族の税金増自分で保険料支払い
復帰条件翌年に所得を下げる一定期間後、再申請可能

6. 副業やパートで扶養を外れるケースとその影響

ケース①:年収105万円の副業(ライター+パート)

→ 税金上は配偶者特別控除対象(扶養OK)
→ 勤務先が大企業で週20時間以上なら社会保険加入(106万円の壁)

ケース②:年収130万円を超えるネット物販副業

→ 税金上は控除一部あり(150万まで)
社会保険の扶養から外れるため、健康保険・年金を自分で負担(年間20~25万円増)

ケース③:年収160万円の動画編集副業

→ 税金上も社会保険上も扶養から外れる
→ 税金UP+保険料負担で実質手取り減


7. 収入を抑える?それとも外れる?判断基準とシミュレーション

【A】扶養内で働くパターン

  • 年収:103万円以下(税・社保どちらも扶養)
  • 手取り:約103万円(税・保険ほぼゼロ)

【B】130万円で止めるパターン

  • 社会保険は扶養、税は配偶者特別控除
  • 家族の控除を維持しつつ収入UP

【C】150万円以上稼ぐパターン

  • 税・社保とも扶養外
  • 自分で国保・国民年金を支払い
  • 経費・青色申告で節税すれば手取りアップも可能

シミュレーション(概算)

年収税金・保険手取り備考
100万円ほぼゼロ約100万円扶養内維持
130万円税・社保扶養約125万円限界ライン
160万円社保加入・税発生約130万円自立開始ライン
200万円青色申告活用約155万円節税効果あり

8. 会社員・主婦・学生など立場別の注意点

立場注意点
主婦(夫の扶養)年収130万円未満を意識。パート勤務先が大企業なら106万ラインも注意。
学生親の扶養は「年収130万円未満」。アルバイト+副業の合計で判定される。
会社員自分の副業で扶養家族が外れるケースも。配偶者控除・子ども手当への影響あり。
フリーランス夫婦それぞれが個人事業主として登録し、扶養制度を使わないほうが有利なことも。

9. 扶養から外れたときの手続きと戻る条件

● 扶養から外れたとき

  1. 健康保険組合・勤務先に報告
  2. 被扶養者削除の手続き
  3. 自分で国民健康保険・国民年金へ加入(市区町村)
  4. 翌年の確定申告で配偶者特別控除の適用可否を確認

● 扶養に戻る条件

  • 年収が再び130万円未満になった場合
  • 一定期間安定して収入減が確認できれば再申請可

10. まとめ:扶養の「税」と「社保」は別物。正しく理解して損を防ぐ

  • 扶養には「税金」と「社会保険」の2種類がある
  • 103万円/150万円=税金の壁
  • 106万円/130万円=社会保険の壁
  • 税金上の扶養を外れると家族の控除が減る
  • 社会保険の扶養を外れると自分で保険料を払う
  • 節税・青色申告で“扶養外でも得をする”働き方が可能

収入を「抑える」よりも、「外れても損しない準備」をすることが現代的な選択肢です。
freeeやマネーフォワードなどの会計アプリで収入を管理し、翌年の所得予測をしておくのがおすすめです。


よくある質問(FAQ)

Q1. 103万円を1円でも超えたら控除なし?
→ 配偶者特別控除で150万円までは段階的に控除あり。

Q2. 社会保険の扶養を外れたらいつから保険料発生?
→ 外れた月の翌月分から国民健康保険・国民年金の負担が始まります。

Q3. 扶養を外れても戻れる?
→ 年収が安定して130万円未満になれば再認定可能。

Q4. 副業の種類(物販・ライターなど)で判定に違いは?
→ 違いなし。すべて「年間の所得額(収入−経費)」で判定されます。


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